第2回長野県天文愛好者連絡会(講演会)

第2回長野県天文愛好者連絡会の講演会の概要をご紹介します。

講演演題、講師

○演題: 「天体の位置を測る・・・星食観測と圭表儀」
 ~観測の意義と教育普及への取り組み~

○講師: 宮下 和久さん(星食観測日本地域コーディネーター、 国立天文台特別客員研究員、塩尻市立丘中学校科学部顧問)


講演会

内容

前半は、丘中学校科学部の顧問として、後半は、星食観測にそれぞれ関わってこられたお話しをしていただきました。

丘中学校科学部顧問になるきっかけは、2012年の金環日食の観測にさかのぼります。当時、科学部の顧問ではなかったのですが、陸上部と兼務となり、さらに教育委員会から「金環日食を観察する機会を学校で持つように」というお達しがありました。そこで、日食前日、全校生徒を体育館に集め、太陽が最も欠けた状態を観察し、リングに見えたかどうか観測することをレクチャしました。600人の生徒がその結果を持ち寄り、全校生徒が観測した場所ごと見えた状態を地図に落とすと、リングに見える限界線を導くことができました。

以来、生徒による「何でこうなるのか知りたい」という欲求から、太陽の動きを使った観測を続け、現在は江戸時代の観測機器である圭表儀を自作し、太陽の南中高度や南中時刻を測っています。観測結果は、科学部による考察を重ね、近日点、離心率、さらにケプラーの第2法則も導き出すことにもつながってきました。

後半は、星食観測に関わる話です。

星食は「位置天文学」です。350年の歴史があります。かつて、海上保安庁海洋情報部が世界中の星食観測のとりまとめをしていた(1981-2008)のですが、これが廃止となったことを機に、宮下先生が世界掩蔽観測者協会(IOTA)の日本での窓口として、星食観測日本地域コーディネータ(JCLO)となり、日本の星食観測のとりまとめを行うことになりました。

合わせて、ビデオで撮影した星食現象を測定する、光度変化測定解析ソフトLiMovie(ライムビー)を独自に開発し、現在は、世界中の星食観測者が使っています。このソフトを使うと、星食現象から正確な食時刻がわかるだけでなく、未知の二重星を見つけることもできます。

LiMovieを使うと、高精度な食時刻を求めることができます。現在は、月探査機「かぐや」や、「LRO」による精密な月の形がわかり、また、位置天文衛星「ヒッパルコス」や「ガイア」により観測された星表で、正確な恒星の位置がわかっています。それでも、未だ星食観測は色あせることなく、今後もその必要性があるのです。


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